ジュニアテニスに本当に必要なのは「フォーム指導」だけではない

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〜なぜ、子どもの身体を見られないテニスコーチが多いのか〜

ジュニアテニスの現場を見ていると、いつも感じることがあります。

それは、
「フォームを直すコーチ」は多いけれど、「なぜそのフォームになっているのか」まで見られるコーチは少ない
ということです。

もちろん、テニスコーチは技術を教える仕事です。

フォアハンドの打ち方。
バックハンドの打ち方。
サーブのフォーム。
フットワーク。
試合の戦術。
メンタル。

これらを指導することは、とても大切です。

しかし、ジュニアの場合、それだけでは足りません。

なぜなら、子どもの身体はまだ成長途中だからです。

筋力も、骨格も、柔軟性も、バランス感覚も、関節の使い方も、大人とはまったく違います。

それなのに、大人と同じようにフォームだけを見て、

「もっと腰を回せ」
「もっと前で打て」
「体を開くな」
「膝を使え」
「腕だけで打つな」
「もっと踏み込め」

と指導してしまう。

一見、正しいことを言っているように聞こえます。

でも本当に大事なのは、
その子がなぜ腰を回せないのか
なぜ前で打てないのか
なぜ腕だけで打ってしまうのか
なぜ踏み込むとバランスを崩すのか
という原因を見ることです。

そこを見ずに、ただフォームだけを直そうとすると、子どもにとってはかなり危険な指導になることがあります。

フォームは「原因」ではなく「結果」

テニスのフォームは、ただの形ではありません。

その子の身体の使い方、柔軟性、筋力、バランス、足の状態、股関節の動き、体幹の安定性、肩甲骨の使い方などが全部表に出たものです。

つまり、フォームは「原因」ではなく「結果」です。

たとえば、フォアハンドで腕だけで打っている子がいたとします。

このとき、よくある指導は、

「もっと体を使って」
「腰を回して」
「左手を使って」
「下半身から打って」

というものです。

もちろん、言っていること自体は間違っていないかもしれません。

でも、その子が本当に体を使える状態なのかどうかを見なければいけません。

股関節がうまく使えていないかもしれない。
足裏で地面を押せていないかもしれない。
胸椎が回らないかもしれない。
体幹が安定していないかもしれない。
肩甲骨が動いていないかもしれない。
そもそも足に痛みがあるかもしれない。

そういった身体の問題があるのに、フォームだけを変えようとしても、子どもはうまくできません。

できないどころか、無理に動かそうとして、別の場所に負担がかかることもあります。

「できない」のは、意識が低いからではない

ジュニア指導で気をつけなければいけないのは、
できない理由を、すぐに本人の意識や努力不足にしないことです。

「集中していない」
「言ったことを聞いていない」
「意識が足りない」
「もっと頑張ればできる」

そう見えてしまう場面は確かにあります。

でも、実際には、子どもの身体がまだその動きに対応できていないだけの場合もあります。

特に小学生から中学生にかけては、成長のスピードに身体のコントロールが追いつかない時期があります。

身長が急に伸びる。
柔軟性が一時的に落ちる。
筋力が追いつかない。
左右差が出る。
足や膝や腰に負担が出る。

この時期に、ただ「フォームが悪い」と決めつけてしまうと、本当の原因を見落としてしまいます。

子どもはサボっているわけではない。
やる気がないわけでもない。
言われたことを無視しているわけでもない。

身体の構造上、まだその動きができない。
痛みや違和感があって、無意識にかばっている。
必要な可動域や安定性が足りていない。

そういう可能性を、コーチも保護者も持っておく必要があります。

ジュニアの身体は、大人よりずっと難しい

ジュニアの指導が難しい理由は、技術だけではありません。

一番難しいのは、身体が日々変化していることです。

昨日までできていた動きが、急にできなくなることもあります。
急に足が痛くなることもあります。
急にバランスが悪くなることもあります。
急にフォームが崩れることもあります。

これは、子どもが下手になったわけではありません。

成長期にはよくあることです。

特にテニスは、かなり身体への負担が大きいスポーツです。

ダッシュ。
ストップ。
切り返し。
ジャンプ。
回旋動作。
片足での踏ん張り。
上半身と下半身の連動。
サーブでの肩や腰への負担。

これらが何度も繰り返されます。

だからこそ、ジュニアには、技術指導だけではなく、身体の見方が必要です。

足部。
足首。
膝。
股関節。
骨盤。
体幹。
胸椎。
肩甲骨。
肩。
肘。
手首。

これらがどう連動しているのかを見ないまま、ラケットの振り方だけを指導するのは、とても表面的です。

なぜ、身体を見られないテニスコーチが多いのか

では、なぜテニスコーチの中には、ジュニアの身体やバイオメカニクスを見られない人が多いのでしょうか。

それは、単純にそのコーチの能力が低いという話ではありません。

大きな理由は、テニスコーチの世界が長い間、
「テニス技術を教えられれば成立する」構造だったから
だと思います。

球出しができる。
ラリーができる。
フォームを教えられる。
試合経験がある。
戦術を話せる。
レッスンを回せる。

これができれば、テニスコーチとして成立してしまう。

でも、ジュニアの身体を見る力は、それとは別の能力です。

関節の動き。
成長期の身体。
ケガのリスク。
運動連鎖。
可動域。
安定性。
身体の左右差。
足の問題。
負荷管理。

こういった知識は、意識して学ばなければ身につきません。

自分が選手として強かったからといって、子どもの身体を見られるわけではありません。
テニスが上手いからといって、バイオメカニクスが分かるわけでもありません。
試合で勝ってきたからといって、成長期のリスクを理解しているとは限りません。

ここを、保護者の方にはぜひ知っておいてほしいと思います。

「強い選手を育てる指導」と「今だけ勝たせる指導」は違う

ジュニアテニスでは、短期的に勝つことだけを考えれば、いろいろな方法があります。

ミスをしない。
とにかく返す。
深くつなぐ。
相手のミスを待つ。
サーブを入れることだけ優先する。
フォームよりも勝ち方を優先する。

これでも、小学生や中学生のうちは勝てることがあります。

もちろん、勝つ経験は大切です。

ただし、問題は、
今勝つための動きが、将来強くなる動きとは限らない
ということです。

身体を大きく使えない。
回旋動作が小さい。
手先で合わせる。
下半身を使えない。
無理なフォームでボールを入れる。
痛みを我慢して練習する。

こういった状態で勝ててしまうと、本人も保護者も「これでいい」と思ってしまいます。

でも、カテゴリーが上がったときに、急に通用しなくなることがあります。

ボールのスピードが上がる。
相手のフィジカルが強くなる。
攻撃力が必要になる。
サーブ力が求められる。
長い試合を戦う体力が必要になる。
ケガなく練習を継続する力が必要になる。

その段階で、身体の土台ができていないと、大きく伸び悩みます。

ジュニア期に本当に必要なのは、今だけ勝つためのフォームではありません。

将来、強くなるための身体の使い方を育てることです。

痛みは、子どもからの大事なサイン

保護者の方に特に意識してほしいのが、子どもの痛みです。

足が痛い。
膝が痛い。
腰が痛い。
肩が痛い。
肘が痛い。
手首が痛い。

こういった痛みを、ただの疲労や根性の問題で片付けてはいけません。

もちろん、スポーツをしていれば多少の疲れはあります。

でも、痛みが繰り返し出る場合、そこには必ず理由があります。

フォームの問題かもしれない。
足の使い方かもしれない。
練習量が多すぎるのかもしれない。
シューズやインソールが合っていないのかもしれない。
身体の成長に負荷が合っていないのかもしれない。
特定の関節や筋肉に負担が集中しているのかもしれない。

特にジュニアの場合、痛みを我慢して練習を続けることは危険です。

子どもは、自分の身体の状態を正確に言葉にできません。

「ちょっと痛い」
「なんか変」
「走ると痛い」
「終わったあとに痛い」

こういう小さな言葉の中に、大事なサインが隠れています。

そのサインを見逃さないことが、保護者の大切な役割です。

保護者が見るべきポイント

保護者の方に、専門的なバイオメカニクスを学んでくださいと言いたいわけではありません。

でも、最低限、次のような視点は持っておいてほしいです。

子どもが同じ場所を何度も痛がっていないか。
練習後に歩き方が変わっていないか。
片足だけ極端に使いにくそうではないか。
打つときに毎回バランスを崩していないか。
サーブのあとに腰や肩を気にしていないか。
疲れてくるとフォームが極端に崩れていないか。
成長期に練習量だけが増えていないか。
コーチが痛みや身体の状態を気にしてくれているか。

そして何より大事なのは、
子どもができない理由を、すぐに気持ちの問題にしないことです。

もっと頑張れ。
ちゃんとやれ。
言われた通りにやれ。
集中しろ。

そう言いたくなる場面もあると思います。

でも、その前に一度、
「身体的にできない理由があるのかもしれない」
と考えてあげてほしいのです。

良いコーチは、フォームだけを見ない

良いテニスコーチは、フォームだけを見ません。

なぜそのフォームになっているのか。
その動きは将来につながるのか。
身体に無理がかかっていないか。
痛みの原因はどこにありそうか。
今の年齢でどこまで求めるべきか。
成長段階に対して練習量は適切か。
その子に必要なのは技術練習なのか、身体づくりなのか。

そこまで見ようとします。

もちろん、テニスコーチが医師や理学療法士の代わりになることはできません。

痛みがある場合は、専門機関に相談するべきです。

ただ、現場で毎日子どもを見ているコーチだからこそ、気づけることがあります。

「あれ、今日は動きが違う」
「最近、片足に負担が寄っている」
「サーブのあとに腰を気にしている」
「成長期に入って動きが重くなっている」
「このフォームは今は入っているけれど、将来的に危ない」

そういう視点を持てるかどうか。

そこに、ジュニア指導者としての差が出ると思います。

これからのジュニア指導に必要なもの

これからのジュニアテニスに必要なのは、ただボールを打たせる指導ではありません。

ただフォームを直す指導でもありません。

必要なのは、
テニス技術 × 身体の見方 × 成長段階 × ケガ予防
をつなげた指導です。

子どもの身体は、まだ完成していません。

だからこそ、今の勝ち負けだけではなく、3年後、5年後、その先まで見てあげる必要があります。

小学生のうちに勝つことも大切です。
大会で結果を出すことも大切です。
一生懸命練習することも大切です。

でも、それ以上に大切なのは、
ケガなく、長く、強くなり続けられる身体と動きを育てること
です。

保護者の方には、ぜひコーチを見る目を持ってほしいと思います。

そのコーチは、フォームだけを見ていないか。
ミスの原因をすぐに気持ちの問題にしていないか。
痛みに対して軽く考えていないか。
成長期の身体を理解しようとしているか。
今勝つことだけでなく、将来を見てくれているか。

ジュニアテニスは、子どもの未来を預かるものです。

だからこそ、指導者はもっと学ばなければいけない。
保護者も、もっと知る必要がある。
そして、子どもの身体をもっと大切に見ていく必要があります。

テニスが上手くなることと、身体を壊さないこと。

この2つは、どちらか一方ではありません。

本当に強くなる子は、
良い技術と、良い身体の使い方の両方を育てていく
のだと思います。

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